

鏨触
おふたりの良いところ。 働き者の手をしてるところ。 美容師という仕事を楽しんでるところ。 違うことは違うと言ってくれるところ。 カメラを向けるとすぐポーズをとってくれるところ。 チーム名をカメーズと名付けてくれたところ。 カメを数匹飼ってらっしゃるのでカメーズ。 タートルズじゃないんだとふと頭をよぎったが 確かにカメーズの方がストレートでいい。 ふたつとも六角形をベースにデザインを考えた。 シャープなものと流線的なものの対照的なデザインだけど 素材と仕上げを揃える事でゆるやかに共通点をつくる。 どこまで共通させないかをさぐるのは結構楽しい。 表面は象嵌(ぞうがん)という技法を用いた。 鏨(タガネ)と呼ばれる先の尖った鉄の棒で 一打一打溝を切っていくやり方。 今回、鏨を使い仕上げをして思いついたのだが、 書や絵画で筆使いによって生じたリズムや強弱などの ニュアンスのことを筆触(ひっしょく)と言う。 それなら金属表現において鏨を用いた表面仕上げのことを 鏨触(ざんしょく)と呼んでもいいんじゃないかと思い 今回から勝手にそう呼ぶことにした。 筆触という


楓蔦黄
西は中央アルプス山脈、東に南アルプス山脈という
絵に描いたような景色の中で生まれ育ったおふたり。
リモート打ち合わせの最中故郷のお話を聞きながら
その土地の匂いを感じた気がした。
故郷のアイデンティティを指輪に入れたいと思った。
当たり前にそこにありすぎて忘れそうになるものを、
これからも絶対に変わらないものの儚さを。
当たり前だけど指輪は金属でできている。
焼き物ならば土
服ならば綿や麻
料理ならば食材
これらすべて、素材に地域性が大きく関わってくる。
素材を抽出しようとすると必ずその土地の
個性がひっついてくる。
でも金属という素材は良くも悪くも地球上どこで
採れても同じであって、あっちの金はカチカチだけど
こっちの金はフカフカやで〜などは絶対にない。
無個性なのだ。
昔から素材の持つ地の個性への憧れはずっとあって
うらやましいな〜なんて思いながら金属遊びをしてきた
わけだが、最近はその無個性という個性も
案外悪くないのかもしれないと思えるようになってきた。
地の個性が無い分、そこに頼らず作る側の考えてることや
意図を乗せやすい。